便潜血検査の功罪
「便潜血検査だけで本当に大腸がんは心配ないのか?安心できるのか?」
大腸がん検診で広く行われている「便潜血検査」は、確かに便利で手軽ですが、検査の限界や見落としリスクについてはあまり知られていません。
今回は、便潜血検査のメリットとデメリット(功罪)を、わかりやすく解説します。
便潜血検査とは?
便潜血検査(FOBT:Fecal Occult Blood Test)は、便の中に血液が混じっていないかを調べる検査です。
一般的には、大腸がん検診として年1回または2回提出し、陽性なら大腸内視鏡検査による精査が勧められます。
1.【功】便潜血検査のメリット(利点)
◎手軽でコストが低い
– 自宅で簡単に採取でき、通院の必要がない
– 健康診断や自治体のがん検診にも広く採用されている
– 医療費・検査コストが安価である
◎大腸がんの早期発見に一定の効果あり
便潜血検査を定期的に受けている人は、受けていない人に比べて大腸がん死亡率が約30%低下することが報告されています(NEJM 1993;328:1365)。
これは、進行がんになってからでも比較的早期に見つけられる可能性があるためです。
2.【罪】便潜血検査の限界と注意点
X ポリープや初期がんは見逃しやすい
大腸がんの多くはポリープ(腺腫)から進行しますが、ポリープは出血しないことも多く、便潜血検査では反応しません。つまり、
– 便潜血が陰性でもポリープが存在する可能性がある
– がんの「予防=ポリープの早期治療」にはつながりにくい
X 偽陰性・偽陽性が起こりうる
– 偽陰性(本当は大腸がんがあるのに陰性になる)→ 安心してしまうリスク
– 偽陽性(大腸がんではない出血でも陽性になる)→ 不必要な内視鏡検査になることもある
また、1回きりの検査では信頼性が低く、年間2回検査しても大腸がんが便潜血陽性になる感度は70~80%程度と報告されています。つまり、大腸がんがあっても、20-30%は便潜血検査が陰性となってしまうわけです。
3.内視鏡検査との比較:何がどう違う?
4.便潜血検査の正しい使い方とは?
便潜血検査は、「大腸がんのスクリーニング(ふるい分け)」としては有効なツールです。しかし、検査をしただけで安心するのは危険であり、以下に注意しましょう。
– 検査が陽性なら必ず大腸内視鏡検査を受ける
– 50歳を過ぎたら、一度は大腸内視鏡検査を受けるのがおすすめ
– 家族歴や過去にポリープがあった方は、積極的に大腸内視鏡検査を受けるのがおすすめ
5.まとめ:便潜血検査の功罪を正しく理解しよう
– 便潜血検査は「出血を伴う大腸がんの検出」には有効だが、「がんの予防=ポリープ切除」には不十分
– 陰性でも大腸がんや大腸ポリープがみられることがあるため、便潜血検査の結果を過信してはいけない
– 大腸内視鏡検査と組み合わせることで、真の予防と早期発見が可能になるでしょう
当院の大腸がん検診(便潜血検査・内視鏡検査)
とよだ内科・内視鏡クリニックでは、
主に、鎮静下での苦痛の少ない大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行っています。
便潜血陽性の方はもちろん、大腸ポリープの切除をしたことがある方、大腸がんと診断された血縁者がおられる方、過去に検査を受けたことがないが大腸がんが気になる方など、大腸がんが心配な方はぜひ一度ご相談ください。